禁煙はまだ続いている。加えて昨日は酒も飲まなかった。
昨日の睡眠時はニコチンもアルコールも体内に蓄積していない、この十数年来で最もクリーンな睡眠であった。
連日の不摂生が体を蝕(むしば)み超体調不良だった昨日は、アルコールを一滴も飲まなかったのだ。
不眠症対策でここ何年も寝酒は欠かさなかった。
体調不良でも少量の寝酒は必ずしていたから、酔ってないのに眠れるか不安だった。
せっかちなオレは、眠りに至るまでの空白の時間が寂しいし嫌いなので、ぱっと眠りたくていつも寝酒が深酒になってしまうのだ。しかし昨日は頑張ってシラフで寝てみる事にした。
全く眠れない!
オレのこのねぐらは森の中に佇んでいるから静かで空気も良いし、光も全く入り込まないので、睡眠にはこの上ない環境である。やはり根っからの不眠症なのだ。
思えば幼稚園の時から不眠症だった。
幼稚園のイベントでお泊まり保育があった。親元を離れて幼稚園に一泊するというイベントである。消灯が訪れ、周りの園児がスースーと寝息を立てる中、オレは目をギンギン見開いてずっと天井を見つめていた。全く眠れなかった。
ここ何年もシラフで眠りにつく事は無かったので、どうやっていつも寝ていたか思い出せなかった。オレはいつも右向きで寝ていたっけ?それとも左向きだったっけ?
それに、まぶたの奥で眼球がプルプルプルプル小刻みに動くのが気になって、全く眠れなかった。
この体勢で目を閉じていれば、自然に眠りに落ちるんだっけ?どういう切っ掛けで?知らない内にだっけ?などと、当たり前の人間の生理現象を改めて深く考え込んでしまった。
考え込むとまた眠れなくなるし、やっぱり一杯くらい飲んでから寝たほうが良かったかな、どうしよう、少し飲もうかな、いやちょっとウトウトしているかもしれないから、ここで起き上がって脳に血流を送ったら、今まで眠れなくても頑張って横になっていた一時間くらいの努力が無駄になるから、やっぱりやめよう。はた目にはくだらない真剣な葛藤は、更に眠りからオレを遠ざけた。
やはり深酒をして、布団に入ったらすぐにヒューズを飛ばして眠りに落ちる寝かたが、オレには合っているのかもしれないと、二時間後くらいに結論付けたあたりに、オレは眠ってしまったようだ。
夜中に何度も目が覚めてしまったし、沢山の夢を見た。
シラフで眠ると、眠りが超浅いようだ。
気を許すと浅瀬から完全に浮き上がってしまうような、不安定な水面を浮遊しているような感覚の眠りだった。
今までの習慣を断つと、それに変わる何かが、やはり必要なのかもしれないな。
タバコの替わりにフリスク。寝酒の替わりに・・・子守唄?