小さい頃は両親をパパ・ママと呼んでいた。
外資系企業に勤める父の影響で、国際色のある家庭だったからだ。というのはもちろん嘘で、父方の祖父母がまだ若かったのでそちらを、おとうさんおかあさんと呼ぶように教えられ、それと区別化を図る意味で両親をパパママと呼ばせるようにしたのだと後に知った。
家庭の事情なので、決して僕が甘えん坊だったわけではないんでちゅ。
しかし、中学くらいになると思春期を迎え、パパ・ママと呼んでいる自分に自己嫌悪を持つようになった。いい大人が(その時はもう自分は大人だと思っている)
「パパ~十和田湖に連れて行ってよぉ~」
とか、
「ママぁ~たまには夕飯に、
いちご煮出してよぉ。でもママ、アワビをミル貝に変えてだまさないでね」
などは、こどもの呼び方であり、それに自己嫌悪だったのだ。しかしなかなかすぐには直せない。恥じらいもある。両親の呼び方をお父さんお母さんにしようと決心するも、中々言えなかった。「ねえ」とか、「あのぉ」と最初のうちは呼んでいたかもしれない。
友人が家に遊びに来ると冷や冷やした。友人とオレの前で母親が、
「ママはこれから出かけるから、仲良く遊んでいるんだよ」
などと、母親が自分の事を指す時に“ママ”と言わないだろうかと不安だったのだ。
中学生の期間に自然と呼び方はお父さんお母さんに修正できたが、いまだ両親は自分の事を指す時に、パパねえとか、ママはねえと言っている。幼少の頃の淡い名残りだから、実家に帰ってそれを聞くとほんわかするなあ。
しかし修正が完了したあたりの頃は、それすらもいやだった。逐一友達に小さい頃の名残りだと説明するのが面倒だった。しかし今は全然気にしない。
逆にまた、パパ・ママに呼び方を戻そうかなとも考えている。酔っ払ってろれつが回らない時は、パパ・ママの方が言いやすいから。それにいい大人が、パパ・ママと呼ぶのもなかなか無いと思うし。
「ママ」→「お母さん」への呼び名の変えどきは? | Excite エキサイト