先輩シャーク氏の怪異譚で思い出したのだが、なんとも背筋の凍りつく、八甲田山にある無人の別荘から119番通報があった話しである。
電話の向こうは無言で、ザーザーとノイズ音しか聞こえない。通報者が電話機の前で倒れているのではと、救急隊員10人が現場に急行したのだ。
しかし家は戸締まりがしっかりされていて、人が入った形跡はない。窓ガラスを割り中へ入って調べるも人気は無かった。
隊員たちは古い黒電話を発見する。119番通報の発信元である。
指令室は電話を切らず、ノイズ音を出し続けておいたため、この黒電話が発信元であることは間違いなかった。しかし、受話器は電話機に置かれたままだった。
原因究明がされたようで、偽装通話説がある模様。専門家によると、プッシュホンならば海外の回線を使って偽装119番通報が出来るのだとか。黒電話では不可能であるし、発信元がそこまでしてニセ通報をする動機が見当たらない。
もう一つの可能性は風との事。当時(2014年5月)深夜、この地域は強風で、別荘の電話線が切れかけていた。そこに強い風が当たって通話状態になったのではという説である。
ダイヤル式の電話は番号の数だけ通電と断線を繰り返す仕組みで、9の場合は限られた時間内に9回通電と断線を繰りかえさないと掛からない。確かに、次の番号をダイヤルするのに間隔が開き過ぎると、プープーと切れてしまう。だから、風が同じ間隔で通電と断線を繰り返し、119を発信出来る偶然はほぼ無いといえよう。
その別荘は1902年冬、陸軍兵士199人が雪中行軍中に遭難した場所に近いとの事。。
慰霊碑である後藤伍長像が直立しているのは、仮死状態になっても立っていたために、救援隊が遭難者を発見出来た事に由来する。
地元では「軍隊が行進する音」「青い発光体」「明治時代の軍服を着た兵士」等の目撃情報が絶えないようである。
大正・昭和初期の新聞に、当時の陸軍が八甲田で冬期訓練の露営テントを張ると、テントの外で大勢の話し声や「隊列右」などといった掛け声が聞こえてくる事がある、という記録も残されている。