先の記事で、昨日は新しく移転した一福鮨でチュッチュ(カワハギ)を食べたと述べたのだが。
なぜカワハギの別称チュッチュを知っているかと言うと、父親と幼い頃に六ヶ所村泊の岸壁で釣りをした時、よく釣れたからなのだ。
あのおちょぼ口を見れば分かるとおり、餌だけを食べる名人で、中々針に掛からない。当たりがあったら竿をヒュン!としならせて、そのおちょぼ口に引っ掛けるという技を父親は編み出していた。
それでも中々難易度の高い魚なのだが。
どうしてもお前らを釣ってやるぞ!と鼻息の荒かった父親は、針を極小のものに変えてみたり、沢山釣り糸に針を付けて魚影に放り込み、そこでぶんぶんぶんぶん竿を振り、カワハギが餌を食べるでもなく針をボディに引っ掛けて釣り上げる、という強引な釣り方もしていた。
いま思うと父親は枠にとらわれない太公望なのである。
ちなみにカワハギの別称チュッチュは、釣り上げた時にそのおちょぼ口が「チュッチュ」と言う、もしくはチューの口をしているからとか。
かくして父親式チュッチュ攻略は奏功し、よく釣れるようになったのだ。
それを見ていた母親、アウトドア嫌いなインドア派で釣りも全くやりたがらないのだが、「いいがら面白いからやってみ」と父親に勧められ、渋々釣竿を渡されたのだ。するとこれが入れ食い状態で、
「すごいすごい!あはははは!あはははは!」
と先ほどまでの渋々が、大興奮に変わったのである。
母親は釣りをしたのもおそらくこの日が最初で最後、そしてあんなに大興奮で大笑いしている母親を見るのも、オレは初めてだった。
「チュッチュ」と舌打ちをしながら母親に釣り上げられるチュッチュを、父親は針から外すのに忙しかったが、嬉しそうだった。
そんな懐かしい記憶と共に昨日、チュッチュはオレの胃袋に収まったのである。