不動産屋勤務の知人スギハラ氏と飲む時には職場の色々を聞くのだが、異ジャンルの職業の話しを聞くのは興味深く、面白い。やはり、事故物件はあるとの事。
霊感はない知人なのだが、どうもその部屋には何かあると感じてしまう。
取り扱う物件の部屋の図面を書く為に入ると、なにか見られているような気がする。そういう部屋だから早々に仕事を終わらせ、後にするも、あの抜かりないスギハラ氏が、ミスを犯すというのだ。
窓を閉め忘れたような気がするとか、ガスの栓を閉め忘れたとか、書類を置き忘れたとか、そういう類である。
通常部屋の図面を作成したら二度と行かなくてもいい場所、いや、二度と行きたくもない場所なのに、再度行かざるを得ない事態に陥るというのだ。そういう場合は部下に行かせているとかいないとか。
見られているような気がする、呼ばれているような気がする、そんな部屋だったなと、後日その部屋の前の借り主がどうなったのかを大家さんに聞くと、やはりそこで生涯を閉じたと聞かされる。死因は教えてはくれない。
ある別の物件で、友達と連絡がつかない、やばいかもしれない、カギを開けてもらえないかと、血相を変えての来店があったというのだが、「親族とか保証人じゃないとカギは開けられない」
なにか胸騒ぎを感じたスギハラ氏、大家さんに問い合わせる。「今月の家賃は振り込まれていますか?」「いや、いつも25日には入金があるのに、今月はないね」
保証人立会いの下部屋を開けると、やはりぶら下がっていたとか。
遺体の検死等が終わり、整理も一通り終わり、大家も部屋に来て、亡くなった息子の母親も来て、そこへ知人は立ち会ったというのだが、打ちひしがれつつも「すみませんすみません」と頭を下げる母親に大家は、
「どうすんのこれ、次が決まらないよ、家賃を考えなくては・・」
等と言い始めたというのだ。引いたとの事。
おい、そういう話しをする前に、まずはお悔やみの言葉だろう普通。
金の亡者は、借り主をただの金にしか見ていないし、そういう大家が多いらしいのだ。キチガイが多いとも。
でもそういう亡者には罰が当たるようで、アパート増築のため?古井戸を埋めたところ、次々と不幸が訪れた大家もいたとか。
その土地からの恵みである、人間が生きる為の水を大地より頂いていたのに、それを儲け主義の自分都合で潰すんだから、不幸になって然るべしなのは分かる気がする。
畏怖。井戸はほんと恐い。元々恐い井戸がますます恐くなった。
ジョーズを見て足のつかない海水浴が恐くなったように、リングで井戸も恐くなった矢先のそんなリアルな話しだった。
って井戸っていまどきあるんだなあ。
実家の団地の集会所には昔、手で漕いで水を引き上げる井戸があったが、いまもあるのだろうか。普通にそれで水を飲んでいたが。
何度かぎこぎこ漕ぐと地底から水が昇って来て、一気にドバー!っと出るので、子供の頃は少々焦った。
漕いでも上手く出ない時は、ぎこぎこ音をどこからか聞きつけたじいちゃんがやって来て、「こうやるんだ」と言ってやってくれた。そんなに水ばっか飲めねーよってくらい漕いで出してくれた。