朝自宅マンションの外に出てみると、道路と壁に落書きがあった。
そういえば夜寝る時に(深夜三時くらい)外が騒々しかったっけなあ。酔っ払いのいたずらだろうか。
青森から朝霞に移り住んで十余年。すでに第二の故郷になっている朝霞にこういう事が起きると気分が悪い。
それに落書きって治安的に不安なものだ。住民への威圧というか、もしかしたら賊は常に近くにいるのではないのかと、余計な警戒をしてしまう。
そうか、よく暴走族がチーム名などを落書きするが、そういう効果があったのか。猫で言うところのマーキングだな。
しかし民俗学的に言うと、無意味なように見える落書きであっても古いものであれば、当時の風俗・文化を知る上で大きな手掛かりとなるケースがあるのだという。
なるほど、明の時代に唐の時代の古い壷と偽ったものが、今となっては価値が高くなるようなものか。当時は迷惑な模造品でも、時を経ればそれなりの価値になるのである。
一瞬にして火山灰に消えたポンペイという街に残された、民衆が残した口語体ラテン語の落書きも貴重だとか。ラテン語は基本的に文献に残る文語だからである。
イタリア人は落書きに対して寛容である。イタリアの文化財に落書きをした日本人学生が停学処分になった際、「いきすぎた処分であり、イタリアではあり得ない」と地元紙が報道した。しかし立場変わって当のイタリアでは、「日本の出来事は落書きが合法と思っているイタリア人にはいい教訓だ」という意見が出て、イタリア人の意識に釘を刺す機会となった。
各国でも落書きは問題視されているようなのだ。ニューヨークでは落書き対策として、18歳以下の青少年にスプレー塗料の販売を禁止する条例がある。シンガポールではペンキや油性ペンなど落としにくい物で落書きをした場合、鞭打ち刑に処される。
日本では器物損壊罪(3年以下の懲役か30万円以下の罰金)に問われる可能性があり、文化財への落書きは、文化財保護法で5年以下の懲役である。
落書きは千年くらいの時を経ないと、どこの国でもただの迷惑行為のようだ。当たり前か・・・
日本において特に落書きが多いのは、トイレの中である。「三上」という言葉がある。馬上、枕上、厠上では、文章を練りやすい場所という意味らしい。移動中の馬の上(交通機関での移動中)・寝床の中・トイレで用を足している最中を指している。便所の落書きはこれに起因するとか。よって、多種多様な人間の利用する駅や高速道路サービスエリアの公衆便所では、多様な落書きが見出されるといわれる。